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「コロネ屋コウジの秘密」

「コロネ屋コウジの秘密」

町はずれの小さなパン屋、「コロネ屋コウジ」。朝になると、通りを歩く人々が必ず足を止める。なぜなら、そこから漂う香ばしいバターとほんのりビターなチョコの香りが、誰の鼻先にも幸福を届けるから。

コウジはもう30年、チョココロネだけを焼き続けている。
「なんでコロネだけなの?」と、何度も聞かれた。
彼はそのたびにこう答える。

「この形が、子どものころに初めて“うまい”と思った味の形なんだよ」

幼い頃、コウジは町一番のパン屋で、母と一緒に買った一つのチョココロネに心を奪われた。パンのやわらかさ、巻かれたチョコの甘さとほんの少しの苦さ。子どもだった彼の世界が、それだけで変わった。

時は流れ、パン職人になった彼は、何百回、いや何千回と試作を繰り返した。コロネの巻き方一つにも意味がある。チョコクリームの粘度、甘みの残り方、パンの温度。全部が「思い出の味」に届くまで、彼は一切の妥協をしなかった。

ある日、彼の店に一人の少女がやってきた。母に連れられたその少女は、ひとくちかじって、目を丸くした。

「ママ、このパン、なつかしい味がする!」

母親は驚いた。娘が“懐かしい”なんて言葉を使うとは思っていなかったから。コウジは微笑みながら、少女に言った。

「それは君の思い出じゃなくても、きっと誰かの“幸せだった時間”を焼き込んでるからだよ」

彼のコロネは、ただ甘いだけじゃない。誰かの記憶に触れるような、不思議な味がする。

そう、コウジの焼くチョココロネには、記憶が練り込まれているのだ。
彼が一生をかけて追い続けた“あの味”は、今日も誰かの心をやさしく包んでいる。

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